リスク情報・レポート

リスク情報・レポート / サステナブル経営 レポート

2024.3.1

統合報告書アワードの評価ポイントと近時動向
~WICI・日経・GPIF の表彰制度を総まとめ~

本号の概要

  • 法定開示の有価証券報告書と並んで金融機関などの機関投資家が重視する企業情報開示の媒体に「統合報告書」がある。国際統合報告評議会(IIRC)は、統合報告書をステークホルダーとのコミュニケーションの手段と位置付け、財務・非財務の両資本を有効活用した価値創造ストーリーの提示を重要視する。
  • 国内企業の統合報告書を評価するアワードの代表格は、WICIジャパンと日本経済新聞社、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の3機関がそれぞれ主催する。各アワードは、独自の視点で多様な出自の審査委員が評価するが、重要な評価項目には共通点も多い。本論ではそれぞれのアワードについて特徴や評価のポイントをまとめた。
  • 統合報告書の重要ポイントになりそうなのは、いずれのアワードも評価対象にしている「開示情報のコネクティビティ(相互連関)」だ。コネクティビティを備えた開示内容にするためには、作成テクニックだけでなく経営の考え方そのものの見直しも時に必要になる。一方、掲載内容を絞り込んだ企業も評価が高かった。今後も各社の創意工夫が問われる。

1. はじめに

機関投資家が注目する企業情報開示として、有価証券報告書と並び重要な媒体に「統合報告書」がある。開示ガイドラインを制定していた旧国際統合報告評議会(IIRC)1の「国際統合報告フレームワーク(FW)」は、統合報告書を「組織の外部環境を背景として、組織の戦略、ガバナンス、実績、及び見通しが、どのように短、中、長期の価値創造につながるかについての簡潔なコミュニケーション2」の手段と定義する。投資家だけでなく様々なステークホルダーに向けた価値提供が目的で、企業が自社の持つ財務・非財務の資本を有効活用する価値創造ストーリーを描き出し、いかに経営を行うべきか考察する「統合思考3」に基づいた任意開示資料の位置付けだ。

サステナブル経営 レポート(旧:新エターナル)

環境問題に関わるテーマを毎号一つ取り上げ、わかりやすく解説した情報誌です。
(A4 10P前後、不定期発行)