レポート

第76号「消防火設備の維持管理の重要性」

2017.6.1

はじめに

2017年2月16日に埼玉県三芳町において発生した大規模な倉庫火災は、火災による財物損害のみならず、物流途絶によるビジネスの機会喪失に加え、近隣住民や環境に影響を及ぼすことになった。火災鎮圧後の消防による火災原因調査により、火災発生時の状況が徐々に明らかになってきている。出火原因は未だ不明であるが、ここまでの大規模な火災に至った経緯においては、特に防火シャッターが正常閉鎖していなかったことが大きな要因であるとされている。消防庁および国土交通省では、2月28日に大規模倉庫に対する立入検査を実施したが、多くの倉庫で防火扉や防火シャッターの閉鎖障害があるという調査結果が出ている。これらの調査結果は、消防火設備※は設置されているだけでは十分といえず、緊急時に有効に機能できるよう維持管理することが重要であることを示している。

同様の例として、停電や災害等による電力供給停止時に消防火設備の非常用電源として使用される自家発電設備の維持管理が挙げられる。2011年の東日本大震災時に正常に稼働しない事例があり、これらの多くは自家発電設備の整備不良によるものとされている。

本稿では、埼玉県三芳町の倉庫火災や消防庁および国土交通省による立入検査の内容を紹介して、消防火設備の重要性を示すとともに、非常時用自家発電設備の維持管理について説明する。

※本稿では、消防用設備等および防火設備を「消防火設備」と称することとする。

1.埼玉県三芳町倉庫火災について

2017年4月12日に、消防庁と国土交通省が「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会」の第2回会合を開催した。

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