レポート

第70号「近年の水災の傾向と企業に求められる対策」

2016.7.1

はじめに

夏から秋にかけての台風シーズンが到来する。これまでのところ、本年は例年に比べ台風の発生件数が少ない。しかしながら、台風以外の原因で発生する水災も近年増加傾向にあり、油断は禁物である。

本レポートでは、近年の水災の特徴・傾向を整理した上で、昨年の9月に発生した平成27年9月関東・東北豪雨を振り返り、今後の教訓とすべき情報を紹介する。さらに、水防法の改正にみる水災対策の動向と、効果的な対策方法の1つであるタイムラインの考え方を紹介する。これらを通じて、各企業における水災対策の一例を提示する。

1.水災の種類と2016年の気象状況

(1)水災について

まずは改めて水災の概要について触れておく。水災のうち、大雨による浸水災害は河川氾濫(外水氾濫)と内水氾濫に大きく分類される。河川氾濫は堤防を越えて水があふれる(越水)、または堤防が壊れて水が流出する(決壊、破堤)現象である。一方、内水氾濫とは市街地などで降雨時に排水が追いつかずに浸水する現象である(図1参照)。

この他、土石流、地すべり、急傾斜地崩壊、高潮といったものも水災に含まれる。

日本全国で発生している河川氾濫と内水氾濫の被害額の割合は図2のとおりである。被害額の合計では、ここ数年で特に2011年の被害額が大きい。

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